同性カップルの相続問題

a1380_001430日本の法律では法定相続人として、戸籍上の配偶者・直系卑属(子・孫・ひ孫等)・直系尊属(父母・祖父母・曽祖父母等)および兄弟姉妹等と定められています。

配偶者は最優先で、その他の相続順位は、第一順位が子供や孫などの直系卑属、子供や孫がいなければ第二順位である父母等の直系尊属属、それもなければ第三順位の兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に他界していれば甥や姪)が法定相続人となります。

遺産分割の内容は別として、法定相続権は上記のように「戸籍上」の親族関係によって決まってしまいますので、ゲイ・レズビアンなどの同性カップルの場合、遺言書等を作成しなければパートナーに遺産を残すことができません。

「もう親とは数十年会っていない」「親族とは絶縁した」といっても、相続関係には影響がなく、法定相続人に相続権が存在します。自分の死後も安心して暮らせるよう、パートナーに財産を残す為には遺言書等を作成してあらかじめ準備する必要があるのです。

(※親兄弟等法定相続人が存在しない場合、原則相続財産は国(国庫)に帰属します。ただし、裁判所に申し立てをして「特別縁故者」(①本人と生計を同じくしていた者②本人の療養看護に務めていた者③その他本人と特別な縁故があった者)と認められた場合、同性パートナーも財産を相続できる可能性はあります。またその制度の本旨ではありませんが、パートナーと「養子縁組」する方法もあります)

パートナーへの遺言書作成

パートナーの養子(養親)になる選択

パートナーへの生前贈与

パートナーとの死因贈与契約

相続と生命保険の活用

パートナーへの遺言書作成

パートナーへの遺言書作成について検討してみましょう。

1.法定相続人がいる場合

戸籍上の配偶者・子等(直系卑属)がいないとすれば、父母等(直系尊属)あるいは兄弟姉妹が法定相続人になります。(順位は父母等が優先)

ここでポイントが1つあります。

・父母等(直系尊属)は遺留分がある。

・兄弟姉妹は遺留分がない。

遺留分(いりゅうぶん)とは、「残された家族に対する最低限の保障」とも呼ばれ、相続人が父母等(直系尊属)のみだった場合、たとえ本人が全財産をパートナーに相続(遺贈)させると遺言しても、父母等(直系尊属)は相続財産の3分の1は請求する事ができます。(遺留分を請求する事を遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)と言いますが、あくまでこれは「権利」であり請求しなければ、相続等を知ったときから1年、相続開始から10年で時効消滅します)

寿命から言えば、父母等(直系尊属)の方が先に他界する可能性は高いのですが、全財産をパートナーに相続(遺贈)させる場合は、注意する必要があります。

兄弟姉妹の場合は、遺留分がありませんので、遺言書にてパートナーに全財産相続(遺贈)する旨を記載すれば、遺言内容を実現できます。

2.法定相続人がいない場合

法定相続人がいない場合、原則相続財産は国(国庫)に帰属します。しかし、遺言書を作成する事によってパートナーに全財産を相続(遺贈)する事ができます。

遺言書が無い場合でも、家庭裁判所に申し立てをして「特別縁故者」としてパートナーが相続財産を取得する可能性もありますが、手続きが煩雑な上、1年以上も時間がかかり、相続財産を全て又は一部でも取得する事が保障されている訳ではありませんので、パートナーへの最後の愛情としてでも遺言書を作成しておく事をおすすめします。

 

 

 

パートナーの養子(養親)になる選択

同性カップルの場合、パートナーに相続財産を残すには、遺言書を作成するのが一般的ですが、パートナーと「養子縁組」するという選択も法的には可能です。(「養子縁組」には原則6歳未満の子供と養父母が利用できる「特別養子縁組」と、その他「普通養子縁組」がありますが、本文では以下「普通養子縁組」を「養子縁組」として記載します

「養子縁組」は年齢の上の人が養親、下の人が養子となり、裁判所等への申し立ては不要で市区町村へ届け出をするだけで成立します。養親が現在戸籍の筆頭者である等以外の場合、新しい戸籍が編成され養親が筆頭者になり養子もその戸籍に入ります。苗字は養親の苗字となります。

この「養子縁組」を結ぶと、法的な「親子」となり、お互いの相続関係・扶養関係等が発生し、法定相続人にもなれます。ただ、養子縁組をしても実父母との親子関係・親族関係が終了するわけではありませんので、注意が必要です。

 メリットとしては、遺言書が無くても一定の相続権が発生する事や、法的な「家族」として入院・手術等があった時に親族として「同意」をする事ができたり、住宅ローンなどを共有名義で組める等が挙げられます。

デメリットとしては、養子縁組をすれば、実父母等の相続関係にも影響を及ぼすので事前の理解が必要な事や、現状の法律では一度養子縁組をすると離縁した後は同一人間で結婚ができない事(同性婚が認められた場合は、何らかの対応があると思われますが・・)、同性カップル同士では同性婚としての意味合いが強いが、法的には「親子」なので、本来の婚姻関係で認められる貞操義務(浮気をしない)等は無い事、養子の苗字が変わる等が挙げられます。

 

 

パートナーへの生前贈与

同性カップル パートナーへの生前贈与と注意点

同性カップルで共働き等の場合は、パートナーの死後の生活費も、各々自前の資産で生活できると思われますが、自分が働き、パートナーが家事をする等で財産上の違いがある場合、遺言書の作成によって財産を残す方法もありますが、パートナーにあらかじめ財産を生前贈与をするという方法もあります。

但し、生前贈与には贈与税という大きな税金の問題があります。生前贈与をした場合は、下記のような贈与税がかかりますので注意が必要です。(原則贈与を受けた方が申告・納税義務があります

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円

基礎控除額 110万円

たとえば贈与財産の合計が500万円をだとすると、

500万円-110万円(基礎控除額)=390万円

390万円×30%(税率)-65万円(控除額)=52万円が贈与税となります。

 

年間110万円以下の贈与の場合は?

贈与税は「暦年課税(れきねんかぜい)」で、贈与した年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金額の合計金額が元になり課税されます。

上記の通り、相続税には「基礎控除額110万円」というものがあります。つまり、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税はかかりません。もちろん税務署への申告も不要です。

生前贈与によってパートナーへ財産を移したい時は、この「基礎控除額110万円」というのを活用して、毎年すこしづつ贈与するのも、節税対策として有効と言えるでしょう。

 

必ず押さえたい※生前贈与の注意点※

①「名義預金」をしてはならない

『毎年110万円以下の贈与なら税金がかからないんだな。よし、じゃあパートナー名義の預金通帳を作って自分が預かり、毎年110万円以下に収まるように口座に入金しておこう』

こう考える方もいるかもしれませんが、この方法は「名義預金」(「借名預金」)といって、口座の名義がパートナーとなっていても、実質的には贈与している本人の財産とみなされ、自分の死後にパートナーの財産ではなく、本人の相続財産に組み込まれる可能性があります。

せっかくパートナーの為に財産を残したいと考えたのに、相続財産に組み込まれ、自分の意図しない法定相続人等に財産が渡ることになれば、全く残念な事です。

生前贈与する場合は、「名義預金」とされなりように準備しておく事が重要になります。

②「贈与契約書」を作成する

銀行通帳の記録を見ただけでは、それが「名義預金」なのか、「贈与によって得た預金」なのか、それとも「貸金」なのか見当が付きません。こちらが「贈与だ!」と主張しても、根拠となるものがなければ税務署に否認される恐れがあります。

そうならない為に「贈与契約書」を作成して、「証拠作り」をするのが有効です。「贈与契約書」を作成した上で、契約書通りに通帳に振り込めば、「贈与した証拠」の一つになります。(金額が大きい場合は、公証役場にて「〇年〇月〇日に贈与契約書が存在した」と確定日付をもらうのもよいでしょう)

できれば現金ではなく、自分の口座からパートナーの口座へ送金すれば、振込履歴も残りますのでベストです。

③「贈与税の申告」をする

贈与税の申告は、贈与があった年の翌年の2月16月~3月15日に申告する事になっています。贈与税の基礎控除である110万円以下であれば税金はかかりませんので、申告する必要はないのですが、あえて「贈与である証拠」を補強する為に、申告する方法もあります。

年間111万円を贈与したとすると、贈与額111万円-110万円(基礎控除)=1万円になります。贈与額200万円以下の場合の贈与税は10%になりますので、1万円×10%=1000円になります。1000円を贈与税として申告・納付し、「 贈与である証拠」の一つにするのです。

④「連年贈与」に注意する

『生前贈与を証明するには、贈与契約書を作るのが有効なんだな。でも毎年契約書を作成するのは面倒だな・・。よし、「今後10年、毎年100万円贈与する」という贈与契約書を作っておこう』

毎年100万円の贈与であれば、贈与税の基礎控除110万円以下のなので、毎年の贈与税はかからない筈です。

しかしながこういった贈与契約の方法は、「10年間で1000万円の贈与を受ける権利」(有期定期金に関する権利)をその贈与契約が結ばれた年に贈与されたと見なされ、贈与税が課税されてしまう可能性があります。

あくまで可能性なのですが、「贈与契約書」を作成するなら、面倒でも毎年作成するのが賢明だと思われます。

 

①~④と注意点を挙げましたが、一言でまとめると「法的に贈与が成立しているか」をいかに証明できるかに尽きます。その他にパートナーが贈与を受けている意思がある事は大前提であり、原則パートナーがその贈与された財産を自由管理(通帳・印鑑の保有)する事が望まれます。

 

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パートナーとの死因贈与契約

同性カップルで「死因贈与契約」を結ぶ

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死因贈与(契約)とは、「本人が死亡したら贈与を実行する」という「契約」です。

生前贈与(契約)」は、「契約」という点は同じですが、「本人が生きている間に相手に贈与を実行する」という点で異なります。また、税金に関しても、生前贈与は贈与税の対象になりますが、死因贈与は相続税の対象になります。(一般的には、贈与税の方が高額です。但し、基礎控除等あり)

他に似たような用語に「遺贈(いぞう)」というものがありますが、遺贈は相手方の受け入れる意思は不要な一方的な意思表示で、無償で財産を渡す方法になります。遺贈も死因贈与と同じく、贈与税ではなく相続税の対象になります。

「死因贈与契約」のメリット

同性カップルの場合、お互いの相続権が無いので、「死因贈与契約」を結び、自分の死後いくらかの財産をパートナーに残すことが出来ます。死因贈与契約自体は、遺言書のような厳格な様式は定められていませんが、当人同士のみで作成する私署文書では後々偽造・変造等を法定相続人に疑われる可能性もありますので、公証役場にて「死因贈与契約公正証書」にすると安心です。

また、死因贈与の内容に、不動産が含まれている場合は、死因贈与契約公正証書において「仮登記をする旨」が記載されていれば、受贈者(パートナー)が当該不動産に単独で仮登記をする事ができます。本人が死亡した後も、遺言執行者を定めておけば遺言執行者と受贈者のみで仮登記から本登記へ移す事ができます。私署文書である死因贈与契約書では、贈与者の相続人全員の承諾書及び印鑑証明書等が必要となりますので現実的ではありません。

「死因贈与契約」のデメリット

死因贈与契約はその名の通り「契約」であるので、遺言書のように本人の意思のみで取り消す事ができません。死因贈与契約の中に、契約の取り消し事由を記載する方法もありますが、あいまいな表現ではトラブルの元になりますので、取り消し条項の取り決めには細心の注意が必要です。

また、「生前贈与」の場合は、預貯金をすぐに受贈者であるパートナーの口座に移す事が可能ですが、死因贈与の場合、銀行等の金融機関がすぐに対応してくれるとは限りません。実務上、死因贈与契約が成立していても、預金の払い戻しには法定相続人全員の承諾書と印鑑証明書を求める金融機関が多いのが現状です。法定相続人の協力がなければ、裁判をして判決を得れば払い戻しはされますが、現実的ではありません。

上記のように「死因贈与契約」にもメリット・デメリットがあります。

場合によっては、パートナーに大きな負担となる事も考えられますので、事前に十分な検討が必要ですね。

 

 

 

相続と生命保険の活用

a0002_003051相続対策に生命保険を活用するというものがあります。

生命保険金は、受取人固有の財産となり相続財産に含まれない(相続税法上は除く)ので、特定の相続人に多くの財産を残したい場合によく使われる方法です。

そうなるとパートナーに財産を残す手段として、自分が保険料を払い、受取人をパートナーにする事が考えられます。

しかしながら残念な事に日本の生命保険のほとんどは、受取人を「2親等以内の親族」(2親等→配偶者・父母・祖父母・子孫まで)としていますので、この方法は、同性カップルには使えません。

唯一「生命保険型信託」として同性カップルでも利用できる可能性がる保険商品がありますので、一度検討してみる価値はあるかもしれません。