名前の「読み方変更」と「漢字変更」

性同一性障害の方で、性別変更の前でもまず「名前」(名字除く)を変えたい人も少なくないと思います。いわゆる名前の変更に関しては「読み方」(住民票)と「漢字」(戸籍)に分けられ、それぞれ変更方法が異なります。

名前の「読み方」の変更

実は名前の「読み方」については、実は住民基本台帳法上に規定がありません。もちろん実際は「出生届」には読み方を記入する欄があり、自治体でも名前の「読み方」を含めて住民登録をしているでしょう。

しかしながら、名前の「読み方」については、法律上要求されている記載事項ではありませんので、ほとんどの自治体では「届出」をするだけで変更ができるようです。

たとえばMTFの方の名前が「光一(こういち)」であり、性別変更後は「一」を取って「光」一文字にする予定の時は、取りあえず読み方の変更として「光一」と書いて(ひかり)や(ひかる)でも全く問題ありません。FTMの方の名前が「優子(ゆうこ)」の場合、性別変更後は「子」を取って「優」一文字にする予定の時も、漢字で「優子」と書いて(まさる)と読んだり、(すぐる)や(ゆたか)でも構いません。

もちろん読み方が変われば、銀行口座やクレジットカード、健康保険証等名前の読み方も含めて登録されているようなものの変更手続きが必要になってきますので、注意が必要です。

名前の「漢字」の変更(名の変更許可申立て)

名前の「読み方」の変更に比べて、「漢字」の変更には厳格な手続きが必要となっています(本来の意味での「名前の変更」(戸籍上の名前の変更)はこの「名の変更許可」です)。まず、変更には「正当な理由」がある事が要件であり、「家庭裁判所の許可」が必要となります。

裁判所では名前の変更についての理由に、以下の条項を挙げています。

1. 奇妙な名前である。
2. むずかしくて正確に読まれない。
3. 同姓同名者がいて不便である。
4. 異性とまぎらわしい。
5. 外国人とまぎらわしい。
6. 平成 年 月に神官・僧侶となった(やめた)。
7. 通称として永年使用した。
8.その他

性同一性障害の場合は、1~7番には該当しないので、「8番その他(性同一性障害の為)」となります。そして名前の変更が必要な事情について、具体的に申立書に記載していきます。(「名の変更許可申立書」は裁判所のホームページよりダウンロードができます)

「性同一性障害の診断を受けている」「「診断と治療のガイドライン」(日本精神神経学会)に沿ってホルモン療法等を受けている」「通称名を利用している(その期間)」「戸籍の名前は男性(女性)である事を示唆するものである」「現在は周りの同意を得て希望する性別で生活(仕事・通学)している」「容姿と戸籍名のギャップにより精神的苦痛を受けている」「家族等も了解しており性別変更をしても混乱が起きる事はない」等々名前の変更が必要な事情を申立書に記載、及び証拠となる書類を添付して裁判所に提出します。

名前の変更の許可・許可については、条項に当てはまれば必ず許可されるものではなく、個々の裁判官の裁量にかかっています。裁判官(裁判所調査官等)との面談は、一種の「プレゼン」だと思い、申立書・証拠となる添付書類などしっかり準備する事が大切です。

裁判所での面談を経て申立てが認められると、晴れて戸籍上の「名前の変更」をする事ができます。その許可書(審判書)を市区町村役場に提出し、数日で戸籍上の名前が変更され、その名前で住民票を取得する事もできるようになります。その後、年金・保険・銀行等の変更手続きをする流れになります。

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