性別変更を原因としたゴルフクラブ入会拒否は違法判断

性同一性障害で戸籍の性別を男性から女性に変えたことを理由に、会員制ゴルフクラブへの入会を拒否されたとして、静岡県内の会社経営者(59)が、同県西部のクラブと運営会社に計585万円の損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁浜松支部は8日、クラブと運営会社に110万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

古谷健二郎裁判長は、入会の拒否は「(『法の下の平等』を定めた)憲法14条の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるものとして違法」と指摘。「原告は人格の根幹部分にかかわる重大な精神的損害を被った」とした。

判決によると、会社経営者は2010年に性別を変更。12年6月、クラブに入会を申し込んだが、性別の変更を理由に拒否された。クラブ側は、入会を認めた場合、浴室などを使う他の女性会員らが不安感を抱き、クラブ運営に支障が生じると主張したが、判決は「危惧するような事態が生じるとは考えがたい」と退けた。
読売新聞より引用

 

司法の世界でも、性同一性障害による性別変更について、どんどん理解が進んできていますね。

裁判の詳しいところまでは分かりませんが、性同一性障害の性別変更については、厳格な要件をクリアして、裁判所に認められての性別変更になりますので、戸籍上の性別変更以外でも社会的な不利益を受ける事はあってはなりません。

これからもこういった訴訟が増える事が考えられますが、少しづつでも日本社会が受容していくといいですね。

(平成26年9月9日)

性同一性障害→「性別違和」へ 

性同一性障害は「性別違和」に、パニック障害は「パニック症」に言い換えを−−。日本精神神経学会は28日、精神疾患の病名に関する新しい指針を発表した。本人や家族の差別感や不快感を減らすとともに、分かりやすい表現を用いて認知度を高めるのが目的だ。学会は今後、医療現場などに新指針による病名を用いるよう呼び掛けていく。

米国の新診断基準「DSM−5」が昨年策定されたのを契機に、関連学会が表現を検討した。主な変更点として、患者や家族に配慮して「障害」を「症」に言い換えた。「障害」の表現が、症状が回復しないとの誤解を与えるためだ。

物事に集中できないなどの症状がある注意欠陥多動性障害(ADHD)は「注意欠如・多動症」に、急に動悸(どうき)などに襲われるパニック障害は「パニック症」、拒食症も「神経性やせ症」、読み書きなどが難しい学習障害は「学習症」に変更した。

身体的な性別と、心理的な性別が一致せず、強い違和感に苦しむ性同一性障害では「障害」との表現に、患者の間で異論が多いことに配慮した。
朝日新聞より引用

日本精神神経学会は、性同一性障害の呼称(病名)について「性別違和」と言い換えをしていくようです。

「障害」を「障がい」と表記を変える動きはありましたが、今回はその表現を抜本的に変える事になりますね。

もちろん言葉を替えただけでは問題の解決にはなりませんが、イメージとしてマイナスの印象があるものを、少しでも変える努力は必要かもしれません。

これを機に数々の精神疾患への理解が深まることを期待したいですね。

(平成26年5月29日)

性同一性障害による性別変更

性同一性障害については、平成15年に成立した「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」により、性別変更についての門戸が開かれました。

性同一性障害による性別変更をする為の要件は?

戸籍上の男性から女性(MTF)女性から男性(FTM)への性別変更については、以下の5つの要件を満たした場合、家庭裁判所に申し立てをし、家庭裁判所調査官の調査等を経て審判されます。

1.2人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること

2.20歳以上であること

3.現に婚姻をしていないこと

4.現に未成年の子がいないこと

5.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

6.他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

 

性別変更後の戸籍はどうなる?

性別変更が認められると、原則新しい戸籍が作られて本人が筆頭者となり、父母との続柄欄が更生(長男→長女等)されます。 但し、従来の戸籍の他の兄弟姉妹の父母との続柄欄の訂正はされません。

性別変更により新しい戸籍が作られると、従来の父母と一緒の戸籍には性同一性障害による性別変更によって本人がこの戸籍から除外された旨が記載されます。従来の戸籍に性同一性障害による性別変更が原因の除外である旨を記載させたくない場合は、性別変更をする前にあらかじめ「分籍」(親の戸籍から離れて、本人単独の戸籍にする)しておけば、従来の戸籍には、その除外原因は記載されません。

また、性別変更により名前の変更を希望する場合も多いと思いますが、名前の変更は別途「名の変更の申立」が必要になりますので、注意が必要です。

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名前の「読み方変更」と「漢字変更」

性同一性障害の方で、性別変更の前でもまず「名前」(名字除く)を変えたい人も少なくないと思います。いわゆる名前の変更に関しては「読み方」(住民票)と「漢字」(戸籍)に分けられ、それぞれ変更方法が異なります。

名前の「読み方」の変更

実は名前の「読み方」については、実は住民基本台帳法上に規定がありません。もちろん実際は「出生届」には読み方を記入する欄があり、自治体でも名前の「読み方」を含めて住民登録をしているでしょう。

しかしながら、名前の「読み方」については、法律上要求されている記載事項ではありませんので、ほとんどの自治体では「届出」をするだけで変更ができるようです。

たとえばMTFの方の名前が「光一(こういち)」であり、性別変更後は「一」を取って「光」一文字にする予定の時は、取りあえず読み方の変更として「光一」と書いて(ひかり)や(ひかる)でも全く問題ありません。FTMの方の名前が「優子(ゆうこ)」の場合、性別変更後は「子」を取って「優」一文字にする予定の時も、漢字で「優子」と書いて(まさる)と読んだり、(すぐる)や(ゆたか)でも構いません。

もちろん読み方が変われば、銀行口座やクレジットカード、健康保険証等名前の読み方も含めて登録されているようなものの変更手続きが必要になってきますので、注意が必要です。

名前の「漢字」の変更(名の変更許可申立て)

名前の「読み方」の変更に比べて、「漢字」の変更には厳格な手続きが必要となっています(本来の意味での「名前の変更」(戸籍上の名前の変更)はこの「名の変更許可」です)。まず、変更には「正当な理由」がある事が要件であり、「家庭裁判所の許可」が必要となります。

裁判所では名前の変更についての理由に、以下の条項を挙げています。

1. 奇妙な名前である。
2. むずかしくて正確に読まれない。
3. 同姓同名者がいて不便である。
4. 異性とまぎらわしい。
5. 外国人とまぎらわしい。
6. 平成 年 月に神官・僧侶となった(やめた)。
7. 通称として永年使用した。
8.その他

性同一性障害の場合は、1~7番には該当しないので、「8番その他(性同一性障害の為)」となります。そして名前の変更が必要な事情について、具体的に申立書に記載していきます。(「名の変更許可申立書」は裁判所のホームページよりダウンロードができます)

「性同一性障害の診断を受けている」「「診断と治療のガイドライン」(日本精神神経学会)に沿ってホルモン療法等を受けている」「通称名を利用している(その期間)」「戸籍の名前は男性(女性)である事を示唆するものである」「現在は周りの同意を得て希望する性別で生活(仕事・通学)している」「容姿と戸籍名のギャップにより精神的苦痛を受けている」「家族等も了解しており性別変更をしても混乱が起きる事はない」等々名前の変更が必要な事情を申立書に記載、及び証拠となる書類を添付して裁判所に提出します。

名前の変更の許可・許可については、条項に当てはまれば必ず許可されるものではなく、個々の裁判官の裁量にかかっています。裁判官(裁判所調査官等)との面談は、一種の「プレゼン」だと思い、申立書・証拠となる添付書類などしっかり準備する事が大切です。

裁判所での面談を経て申立てが認められると、晴れて戸籍上の「名前の変更」をする事ができます。その許可書(審判書)を市区町村役場に提出し、数日で戸籍上の名前が変更され、その名前で住民票を取得する事もできるようになります。その後、年金・保険・銀行等の変更手続きをする流れになります。

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性同一性障害(MTF)も特別養子縁組で「母親」に

性別変更後、特別養子縁組で「母親」になる!

性同一性障害で男性から性別変更した大阪府の30代女性が結婚後、里親の「母親」として児童養護施設から引き取った男児(3)との特別養子縁組を申し立て、大阪家裁に認められたことが2日、女性への取材で分かった。GID(性同一性障害)学会は、女性に性別変更した人が、特別養子縁組で法的に母親と認められるのは「聞いたことがない」としており、国内初とみられる。

性同一性障害のある人の特別養子縁組については「健全な親子関係が営めるか疑問」などとして、縁組の前段階となる里親申請の時点で難色を示されることもある。GID学会理事長の中塚幹也岡山大教授(産婦人科)は「子供をほしいと思う性同一性障害の当事者にとって新たな選択肢になる。性や家族の多様性を考える上でも大きな動きだ」と話した。
引用産経ニュース2014.4.3

性同一性障害(MTF)の方で、性別変更後「母親」になりたい人も多いと思います。生物的に出産するして親子関係を作る事は無理ですが、養親となり養子を取る「養子縁組」を結んで法律的(戸籍上)親子関係を結ぶ事は可能です。

上記のとおり、大阪家庭裁判所にて性別変更して女性になった方について、特別養子縁組が認められ法律的に戸籍上「母」となりました。法的には可能でも、実務上養親と養子のマッチングについて、性同一性障害のある人が不利な状況が続いているようでしたが、今回はその問題がクリアされ、家庭裁判所も将来的な子供の健全育成を含め認めた形になります。

「普通養子」と「特別養子」の違い

今回のニュースは、「特別養子縁組」の成立なので、法的に「」となりました。「普通養子縁組」では法的には「養母」となります。特別養子縁組は普通養子縁組と比べて厳格な要件(①養子になる子は6歳未満(6歳未満から監護されていた場合は8歳未満)、養親は成人であり夫婦の一方は25歳以上②養子と養親は夫婦共同縁組をする③養子の実親の同意が必要等)があり、最終的に家庭裁判所での審判が必要になります。(普通養子縁組の場合、その条件を満たすと原則「届出」だけで養子縁組が結ぶ事ができます)

普通養子縁組の場合だと、実親との関係(扶養・相続関係)が続きますが、特別養子縁組の場合は、実親との法的関係は切断されます。離縁する時も、普通養子縁組の場合は協議のみで可能ですが、特別養子縁組の場合は、特別な事情がある場合のみ家庭裁判所が判断する事ができます。

戸籍関係では、普通養子縁組の場合は、子の父母欄にはあくまで実親の名前が記載され、養父母の欄が加わる形になります。特別養子縁組の場合は、父母欄に実父母の名前の記載はされず、養父母の名前が記載されます。(子の戸籍欄には、特別養子縁組の条文である「民法817条の2」との記載は入りますが、「特別養子縁組」との文言は入りません。又、実親の戸籍から養親の戸籍に移る間に実親の本籍地にて養子単独の戸籍が作られ、特別養子縁組のプライバシー保護の配慮がされています)

他先進国と比べて、日本はなかなか養子縁組の制度が活用されていません。その一方で、少子化といわれながらも、日本では毎年30万件前後の人口妊娠中絶が行われています。今回の大阪地裁の審判を含め、「子供の幸せ」の為、もっと社会的に特別養子縁組制度が浸透・活用されるといいですね。

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性同一性障害(FTM)も性別変更で「父」となる

性同一性障害の方でも性別変更後婚姻をし、特別養子縁組をすれば、法的に(戸籍上)「父母」になれます(「性別変更後特別養子縁組」)。その他に、性同一性障害(FTM)で性別変更して男性になり、一般女性と結婚、第三者の精子提供により出産した場合、民法の嫡出推定によりそのまま性別変更した男性が「父」とする最高裁判決があります。

性同一性障害のため女性から性別を変更した兵庫県宍粟市の男性(31)と妻(31)が、第三者の精子提供による人工授精で妻が産んだ長男(4)の戸籍上の父親を男性と認めるよう求めた家事審判で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は10日付で、申し立てを却下した一、二審の判断を覆し、父親と認める決定をした。「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する」とした民法の規定(嫡出推定)が適用されると判断した。
性同一性障害のため性別変更した男性と妻の子の戸籍に、男性を父親として記載することを認めたのは初めて。裁判官5人中3人の多数意見で、大谷裁判長と岡部喜代子裁判官は、嫡出推定されないとする反対意見を述べた。
引用:時事ドッコム2013/12/11

母子関係は事実上分娩(=出産)によって発生しますが、「父」については異なります。
民法について以下の条文があります。

<民法772条>
1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2.婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

つまり最高裁は民法772条の1「結婚後に妊娠した子は、夫の子と推定する」という条文を適用し、第三者からの精子提供であっても、この推定規定が働き、夫を「父」と認定しました。

最高裁判事でも賛成3反対2という微妙な判決でしたが、これで戸籍上の「父」と認められる事になりました。